【オーストラリアの小学校】ディベートに取り組んで育む“考えて伝える力”

オーストラリアの小学校のディベート

息子は現在、小学4年生です。今年からディベートのチームに参加しています。4年生より上の学年では、毎年Term4(4学期)になると、“ディベート”というものがあります。他校の生徒たちと議論をかわすもので、それに向けて準備したり練習したりする活動です。

学校のフェイスブック情報で知っていたので、「息子はやりたいと言うかな〜。どうかな〜」と思っていました。

目次

まずは“やる気”を表明

Term3のときに募集がありました。ディベートについては保護者宛に手紙やメールで案内が届いたわけではなく、生徒たちに「やってみたい人はいますか?」と声がかけられたようです。

参加希望を表明した生徒の保護者だけに、後日、担当の先生からメールが届きました。

「あなたの子どもさんはディベートに参加したいと名乗りでました。今年は1学年に1チームで、1チームは4〜5人で成り立ちます。今年の4年生はディベートに参加したい子たちが多く、“なぜ、ディベートチームに入りたいのか?”“なぜ、自分はディベートチームの素晴らしいメンバーになれると思うのか?”を文章にまとめてください。それを読んで、5人を選びます」という内容でした。

“Persuasive Writing”の大事さ

ディベートとは少し話がそれますが、息子が通う小学校では2〜3年生くらいの頃から、英語の授業で“Persuasive Writing”に取り組んでいます。Persuasive Writingとは、わたしの理解では「自分の意見や主張を伝える、説得力のある文章を書くこと」だと思っています。

学年によりトピックはさまざまですが、4年生の今は“広告的な文章”を組み立て、それをクラスで発表することを学んでいるようです。

宣伝する対象は自由で、息子は自分の好きなポケモンゲームを選びました。それが、「いかに魅力的で、どういう点が優れていて、こういうことができるから、買うべきだ」と担任の先生とクラスメイトにおすすめ(説得)するわけです。

物事をよく観察し、必要ならリサーチし、特徴をとらえ、自分はこう考えると主張する訓練がされています。息子いわく、「スピーキングとライティング、両方の勉強をしている」そうです。

ディベートも似たようなことをしているように思います。

小学生がする“ディベート”って?

第1回目のディベートの議題は「クリスマスはバースデーよりいいもの」でした。息子たちのチームは「クリスマスはバースデーよりいいもの」を肯定する立場でした。対戦相手校は、それを否定する立場から議論をかわします。

前もってそれぞれがリサーチし、アイデアを持ち寄って、毎日のミーティング(休み時間に集まっているそうです)で作戦をねります。

自分たちの主張(クリスマスはバースデーよりいいもの)をサポートするための理由や根拠を考え、主張できるポイントをまとめ、さらにそのポイントに対して相手がどう反論してくるかを予測し、「こういう意見にはこのように対抗する」というものを何パターンもつくって準備します。

想像力も大事になります。

それらを、意見ごとにパームカード(手に持てる小さなカード)にまとめて、どのような角度からどんな主張が飛んできても応戦できるように準備します。準備は1回のディベートにつき1ヶ月くらい続きます。指導してくださっている先生には頭がさがります。

ディベート当日の様子と5人の役割

5人のメンバーのうち、1人は時間をはかり進行をする“チェアパーソン”、もう1人はパームカードを並べて臨機応変にどの主張で進めていくのかを考える司令塔のような“サイレントスピーカー”、そして3人が実際にパームカードを手にみんなの前で話をする役割です。

当日は、とある小学校の指定された教室に集まり(保護者や祖父母、兄弟などたくさん来ていました)、ジャッジの先生は3人いらっしゃいました(2回戦では2人でした)。

チェアパーソンの司会ではじまります。といっても初戦は、みんな初めての経験なので多少の緊張感が漂っていました。ですが1人目のスピーカーが教室の中央に立ち、話しはじめときから、見守る温かい眼差しとともに、4年生の生徒たちが堂々と話す立ち居振る舞いや内容に感心しきりといった様子でした。ジョークを交えた主張のユニークさに、何度も笑いがおこりました。

「クリスマスはバースデーより、いいよ! だって、〇〇によると(リサーチ先の言及)、クリスマス前や後にはセールがあり、◯%も安く買い物ができるから。バースデーにはセールはありません」とか「バースデーは1人だけのために多額のお金がかかり、準備や手配がストレスですよね。クリスマスはみんなのためのお祝いだし、喜びのためにするものなので、お金やストレスをかける必要はありません!」とか。

お互いつっこみどころがあるので、それに対してどのように反論してくるのかも含めて、観客はやりとりを楽しめます。

すべてのスピーカーが話し終えると、ジャッジの先生方が採点結果をまとめる作業にはいります。そのうち1人の先生が、それぞれの参加者にフィードバックを伝えてくれます。

「もう少し、アイコンタクトをたくさんしたほうがいいよ」とか「緊張していた? 小さな声だったね」とか。生徒たちは素直にきいていたように見えました。

さいごに

もともとディベートに挑戦してみたい子たちの集まりなので、チームで取り組むことに対し、とても前向きな様子が伝わってきました。日々のミーティングや話す練習を見たことはありませんが、息子の話では、メンバーそれぞれ真面目に、そして楽しんで参加しているようです。

“Persuasive Writing”も“ディベート”も、これからの人生において大事なスキルを学ぶ機会になっています。物事や事象を感覚でとらえて、感情的に好き嫌いを述べるのではなく、リサーチ結果や事実に基づき、あらゆる側面から考察し、「だから自分はこうだと考えます」と理論立てて説明できる力をつける、それを小学生のうちから訓練しています。

むつかしいことを述べなくてもいいから、身近なテーマで「自分で考えたことを、自分の言葉でわかりやすく相手に伝え、納得してもらう」能力を育むことは教育の1つの柱なんだと感じます。

みんなの前で話すこと自体は、キンディの頃から“Show and Share”などで体験しています。だから子ども達は、人前で話すことには慣れているというか、恥かしいとすら感じていないように思います。

第2回目のディベートの議題は「ソーシャル・ライフ(社会における人と人とのつながり)はアカデミック・アチーブメント(勉強や成績)よりも大事」でした。息子のチームはこれを否定する立場から議論をしました。

チームメンバーの1人が、勉強や成績のほうが大事だと主張する理由の1つとして「Confidence is everything.(自信をもつことがすべてだ)」と語りました。まさに“自信”たっぷりで堂々たる話っぷりでした。結局のところ、「勉強ができて自信がある人は、ソーシャルスキルも秀でている」と結んでいきます。

その子はTEDで話す大人のようなプレゼンテーション能力があり(もちろん本人の努力や練習あってのこと)、とてもひきつけられました。最後のしめくくりとしてふさわしい話し方に、圧倒されっぱなしでした。

結局、息子が参加しているチームは、1回戦、2回戦と勝ち進み、今は、ファイナルに進めるかどうかの報告を待っているところです。意見を出し合い主張をまとめていく準備段階から、当日の話し手全員の立ち居振る舞いなど、体験しているすべてが息子の成長の糧になるといいな。

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